GO-ONE
GO-ONE
posted with amazlet on 07.02.03
松樹 剛史
集英社
売り上げランキング: 98462
おすすめ度の平均: 2.0
2 これがプロローグならねぇ


『ジョッキー』で第14回小説すばる新人賞を受賞した松樹剛史さんの新作、文庫書き下ろし。若手騎手の青春群像を描いています。『ジョッキー』がとても面白いお話だったのでこれも期待大です。


お話は閉鎖の危機にある地方競馬・春名競馬が舞台。主人公の日下部一輝は春名競馬所属の若手ジョッキーで、家族が経営する日下部厩舎所属。一輝が中央競馬で騎乗したときに中央所属で同い年の一之瀬早紀と田京康友と出会う。
一輝の得意技は「豪腕」。セオリーを無視してスタートから速いペースで仕掛けていき、バテた馬も腕力と、得意の「拍車」で先頭でゴールさせる。一輝は誰の忠告も聞かず、周囲との調和も無視し、自分の腕だけを信じて、ただひたすら勝利だけを求めて騎乗し続けます。
中央競馬の競馬サークル内のしがらみの中で自分を殺して必死に自分の生きる道を模索する早紀は一輝に反発し、康友は逆に競馬サークルの秩序にへつらい生き延びる道を選択しまずが、傍若無人に生きる一輝に憧れを抱きます。
そんな一輝は、春名競馬存続のためにともに戦っていた親友の洋仁が厩舎を離れて外厩に移ったことで傷つき、自分の生き方が正しいことを証明するかのように勝利を貪欲に求めるのでした。
そんな一輝と実の妹で厩務員の一那、早紀、康友の4人の視点で書かれた4編が収められています。


タイトルのGO-ONEとは、「豪腕」というのと、常に1着を目指す一輝の座右の銘?です。
地方競馬の置かれた厳しい状況、リアルなレースシーンや競馬サークルの人間関係など、前作の『ジョッキー』で見せた作者の筆力は、この作品でもいかんなく発揮されています。
ただ、残念なのは、ストーリーらしいストーリーがないから盛り上がりに欠けるのと、最後の一輝の章で、落馬の後遺症で「オレ」と「俺」が入れ替わったお話がとてもわかりにくく、洋仁との別れがストーリーにどう影響してるのかも描ききれてないことです。まるで長編小説の冒頭部分だけを読んでるかのよう、消化不良で終わってしまったような感じ。
でも逆に言えば、これから長編小説の続編を描いても十分なほどの状況や人間像がちゃんと描かれているっていうことでもあるんですよね。だからすごくもったいない気がします。


だから、単に一冊の作品としての評価は★★★☆☆までだけど、ぜひ、続編を描いてほしい。一輝が春名のエースとして中央や海外に挑戦したり、春名競馬の廃止問題の行く末も読んでみたい、そんな気にさせる一冊でした。



それと、なぜかレビューが消えてしまっているので、『ジョッキー』のレビューも掲載しておきます。

ジョッキー
ジョッキー
posted with amazlet on 07.02.03
松樹 剛史
集英社
売り上げランキング: 160254
おすすめ度の平均: 3.5
4 夢とプライドと現実
4 疾走感のある佳作
4 繊細な表現


今まで数多くの競馬小説があったけど、これまでのはミステリー小説や周辺の人々の物語が中心だったりした作品が多く、レースのシーンはあくまでも添え物的な扱いにとどまっている作品がほとんどで、本当に競馬を好きな人であればあるほど、レースの描写の「ありえなさ」がわかってしまい興味を欠いてしまっていたのですが、この「ジョッキー」という作品が素晴らしいのは、物語はレースを中心として組み立てられており、そのレースがとてもリアリティのある書き方になっているところです。そのリアリティあふれるレースを中心に登場人物がとても自然な形で描かれているので、作り物っぽくなく自然に描写されています。


また、これまでの日本のスポーツ小説に出てくる登場人物は、実在の人物が容易に想像できてしまうのが多かった(特に脇役)のですが、この「ジョッキー」では実在の人物とイメージがダブる人がほとんどいないので、物語にウソっぽさがなく、逆にリアリティを増す結果になっています。


ただ、競馬を知らない人に向けての解説がほとんどないので、競馬のレース展開によりどの脚質の馬が有利だとか、ハンデ戦の仕組みだとか、レース名だとか、特別登録だとか、競馬の専門用語や仕組みの知識がない人が楽しむのはちょっと難しいかもしれません。
ですので、競馬を愛する人にお勧めできる、本当の競馬小説だと思います。


評価は★★★★☆。